帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)に感染後、体内にひそんで仮眠していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再度活動を始めること(再活性化)により引き起こされるウイルス感染症です。
典型的には神経の走行に沿って、顔や体の右側か左側のみに、帯状に分布する水疱を生じ、痛みを伴うことを特徴とします(イラスト1)。
典型的には神経の走行に沿って、顔や体の右側か左側のみに、帯状に分布する水疱を生じ、痛みを伴うことを特徴とします(イラスト1)。

イラスト1.水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそう(水痘)を起こすウイルスと同一のものです。
小児期に水ぼうそうを発症後にも、知覚神経節(痛みなどを感じる神経の根っこ)に潜み、水ぼうそうに対する免疫が低下した状況で、神経の走行に沿って、帯状疱疹を発症します。
小児期に水ぼうそうを発症後にも、知覚神経節(痛みなどを感じる神経の根っこ)に潜み、水ぼうそうに対する免疫が低下した状況で、神経の走行に沿って、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹の症状・合併症
水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうを発症後にも、体内からいなくならず、知覚神経節(痛みなどを感じる神経の根っこ)に潜み、水ぼうそうに対する免疫が低下した状況で、神経の走行に沿って、帯状疱疹を発症します。神経は背骨から左右対称性に伸びているので、典型的には神経が通る領域のいずれかの一区画に発疹を引き起こします(イラスト2)。発疹は該当部位の皮膚の赤み(紅斑)から始まり、小さな水疱(小水疱)、その後かさぶたとなりやがて脱落します。通常はこれらの経過が治まるまで2-3週間ほどを要します。
神経が通る領域のどこで帯状疱疹が発症するかにより、合併症を生じることがあります。例えば、目を含む領域での帯状疱疹の場合は、眼球に炎症が波及する場合があり、眼科と連携して診察・治療を行います。また、耳を含む領域での帯状疱疹の場合、片側の顔面の筋肉が麻痺したり(顔面神経麻痺)、聴力障害が出現する場合があり、耳鼻科と連携して診察・治療を行います。
また、帯状疱疹では、発疹が生じている領域でのピリピリとした痛みが出現することが多く、発疹の消失と共に、痛みが改善する場合もありますが、発疹が消失した後も慢性に痛みや、衣服が触れただけでも強い痛みや異常感覚が数か月から数年続く場合があり、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。
神経が通る領域のどこで帯状疱疹が発症するかにより、合併症を生じることがあります。例えば、目を含む領域での帯状疱疹の場合は、眼球に炎症が波及する場合があり、眼科と連携して診察・治療を行います。また、耳を含む領域での帯状疱疹の場合、片側の顔面の筋肉が麻痺したり(顔面神経麻痺)、聴力障害が出現する場合があり、耳鼻科と連携して診察・治療を行います。
また、帯状疱疹では、発疹が生じている領域でのピリピリとした痛みが出現することが多く、発疹の消失と共に、痛みが改善する場合もありますが、発疹が消失した後も慢性に痛みや、衣服が触れただけでも強い痛みや異常感覚が数か月から数年続く場合があり、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。

イラスト2. 神経の分布領域のイラストです。赤い部分は、胸の神経の分布する一区画の例で、区画は背中側まで続きます。
帯状疱疹の診断・治療
帯状疱疹の診断は、特徴的な水疱は発疹の分布から、病歴と患部の視診(患部を見て診断すること)によって可能なことも多いですが、時に診断が難しい場合もあります。
診断の補助として、水疱部位から検体を採取して行う、デルマクイックVZVという迅速検査キットを使用することもあります(写真1)。
帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬の内服、痛みに対しては、鎮痛薬の内服を行います。
ただし、目や耳などへの症状の波及が疑われる場合、またその他の臓器への波及が疑われる場合、それぞれ、眼科や耳鼻科あるいはその他該当科と連携しながら、治療を行う場合があります。また、重症と判断される場合には、入院施設のある病院へのご紹介をさせていただく場合があります。
診断の補助として、水疱部位から検体を採取して行う、デルマクイックVZVという迅速検査キットを使用することもあります(写真1)。
帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬の内服、痛みに対しては、鎮痛薬の内服を行います。
ただし、目や耳などへの症状の波及が疑われる場合、またその他の臓器への波及が疑われる場合、それぞれ、眼科や耳鼻科あるいはその他該当科と連携しながら、治療を行う場合があります。また、重症と判断される場合には、入院施設のある病院へのご紹介をさせていただく場合があります。

写真1. 帯状疱疹の迅速検査キット、デルマクイックVZVです。水疱部位から検体を採取し、5分から10分程度でT(テストライン)に写真のように紫色の線が出現すれば、陽性です。Cはコントロールラインで、検査が適切に行われていれば、紫色の線が出現します。
帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛の発症リスク
水ぼうそうにかかったことのある人は、帯状疱疹を発症するリスクがあります。水ぼうそうにかかると体で水痘・帯状疱疹ウイルスに対抗する抗体が作られます。図1は2014年から2017年の本邦での水痘抗体保有率です。1-2歳では50%前後ですが、15歳以上で90%に達しており、15歳以上で9割以上抗体を保有していることになります。
宮崎県の医療機関を受診した帯状疱疹患者を分析した大規模な「宮崎スタディ」という疫学調査があります。1997年から2011年までに、75789人の帯状疱疹患者を追跡しました。その結果、 特に50歳以上での帯状疱疹の発症率は大きく上昇していました。20-40代の発症率の低下は、子育て世代のため、水ぼうそうへの暴露機会が多く、帯状疱疹への免疫が高まったために発症頻度が減少していると考えられました(図2)。
また、基礎疾患として、糖尿病、高血圧、腎不全、関節リウマチ、癌などを患っている場合の帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告があります1)。
帯状疱疹後神経痛に関しては、香川県で行われた50歳以上の12,522人を対象とした「SHEZスタディ」という疫学調査があります2)。2009年から2012年まで追跡が行われ、帯状疱疹を発症したのは401人でした。そのうち、79人(約20%)で帯状疱疹後神経痛を発症、年齢別の帯状疱疹後神経痛発症割合では、80歳以上で32.9%、50歳代で15.7%と加齢が帯状疱疹後神経痛の発症リスクとなると考えられました。
1)Hata A. et al.: Infection. 39(6), 537-544, 2011
2) Takao Y. et al: J Epidemiol. 25(10): 617-25, 2015
宮崎県の医療機関を受診した帯状疱疹患者を分析した大規模な「宮崎スタディ」という疫学調査があります。1997年から2011年までに、75789人の帯状疱疹患者を追跡しました。その結果、 特に50歳以上での帯状疱疹の発症率は大きく上昇していました。20-40代の発症率の低下は、子育て世代のため、水ぼうそうへの暴露機会が多く、帯状疱疹への免疫が高まったために発症頻度が減少していると考えられました(図2)。
また、基礎疾患として、糖尿病、高血圧、腎不全、関節リウマチ、癌などを患っている場合の帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告があります1)。
帯状疱疹後神経痛に関しては、香川県で行われた50歳以上の12,522人を対象とした「SHEZスタディ」という疫学調査があります2)。2009年から2012年まで追跡が行われ、帯状疱疹を発症したのは401人でした。そのうち、79人(約20%)で帯状疱疹後神経痛を発症、年齢別の帯状疱疹後神経痛発症割合では、80歳以上で32.9%、50歳代で15.7%と加齢が帯状疱疹後神経痛の発症リスクとなると考えられました。
1)Hata A. et al.: Infection. 39(6), 537-544, 2011
2) Takao Y. et al: J Epidemiol. 25(10): 617-25, 2015


国立感染症研究所ホームページより
帯状疱疹ワクチンについて
帯状疱疹の予防として、50歳以上であれば、
①乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」(弱い水痘・帯状疱疹ウイルスそのものを使ったワクチン)
②組み換えサブユニットワクチン「シングリックス」(水痘・帯状疱疹ウイルスを構成する蛋白質の一部を使ったワクチン)
のいずれかの接種が可能です。
②の「シングリックス」は2023年6月より、免疫力が低下していて、帯状疱疹発症リスクが高いと考えられる18歳以上の方への追加承認を受けています。
「ビケン」と「シングリックス」の特徴を表1に示します。有効性のデータは、「ビケン」については、同力価と考えられている同じ弱毒ウイルス株’Oka株’をもとに作製されたZOSTAVAX®のデータとなります。
当院では、シングリックスのみ接種を行っています。
①乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」(弱い水痘・帯状疱疹ウイルスそのものを使ったワクチン)
②組み換えサブユニットワクチン「シングリックス」(水痘・帯状疱疹ウイルスを構成する蛋白質の一部を使ったワクチン)
のいずれかの接種が可能です。
②の「シングリックス」は2023年6月より、免疫力が低下していて、帯状疱疹発症リスクが高いと考えられる18歳以上の方への追加承認を受けています。
「ビケン」と「シングリックス」の特徴を表1に示します。有効性のデータは、「ビケン」については、同力価と考えられている同じ弱毒ウイルス株’Oka株’をもとに作製されたZOSTAVAX®のデータとなります。
当院では、シングリックスのみ接種を行っています。
シングリックス
|
ビケン
|
|
ワクチンの種類
|
不活化ワクチン
(サブユニットワクチン) |
弱毒生ワクチン
|
帯状疱疹予防効果
|
接種後4年で90%程度1)
接種後10年で73%程度1) |
接種後約3年間で51%程度2)
接種後7-11年で37%程度3) (データはZOSTAVAX®のもの) |
接種対象となる方
|
50歳以上の成人
18歳以上の帯状疱疹発症リスクの高い方 |
50歳以上の成人
|
接種が受けられない方 (禁忌)
|
発熱している方(37.5℃以上)
重い急性疾患にかかっている方 過去にこのワクチンの成分に対するアナフィラキシーの既往のある方 医師が予防接種を受けることが不適当と判断した方 |
発熱している方(37.5℃以上)
重い急性疾患にかかっている方 過去にこのワクチンの成分に対するアナフィラキシーの既往のある方 医師が予防接種を受けることが不適当と判断した方 免疫機能に異常のある疾患を有する方及び免 疫抑制をきたす治療を受けている方 |
主な副反応
|
注射部位疼痛(78%)
筋肉痛(40%), 疲労(39%), 頭痛(33%) |
注射部位反応(50.6%)
筋肉痛, 関節痛(1%未満), 倦怠感(1-5%未満) |
接種方法
|
筋肉注射
|
皮下注射
|
接種回数
|
2回 (2回目は2-6か月あけて接種)
|
1回
|
価格
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1回22,000円, 2回で44,000円
2023年8月1日より、小平市より1回10,000円の助成金を受けることができます |
当院では取り扱いがありません
|
1) Strezova A. et al.: Open Forum Infect Dis. 9, 2022
2)Oxmen MN. et al: N Engl J Med: 352: 2271-84, 2005
3) Morrison VA. et al: Clin Infect Dis: 60: 900-9, 2015
2)Oxmen MN. et al: N Engl J Med: 352: 2271-84, 2005
3) Morrison VA. et al: Clin Infect Dis: 60: 900-9, 2015