乾癬(かんせん)とは
乾癬(かんせん)は、皮膚に盛り上がったザラザラした発疹を生じる皮膚疾患で、盛り上がりのある部分は、赤みを帯びた色合い(写真1)から、銀白色の鱗のような発疹(写真2)まで様々です。
乾癬の発疹は、外からの刺激を受けやすい頭皮や生え際、肘や膝に生じやすい傾向がありますが、その他の部位にもでることはあります。また、爪の変形を生じることがあります(写真3)。
乾癬は「かんせん」と読みますが、人にうつることはありません。
主な症状が皮膚にある乾癬は、尋常性乾癬(通常の乾癬という意味です)と呼ばれ、日本人での有病率は、0.4%程度と推定されています。日本人では、男性に多い傾向にあり、発症年齢は30歳代から60歳代で多くなっています。
一部の患者さんに、関節リウマチのような関節症状を伴うことがあり、その場合は乾癬性関節炎と呼ばれます。
乾癬の発疹は、外からの刺激を受けやすい頭皮や生え際、肘や膝に生じやすい傾向がありますが、その他の部位にもでることはあります。また、爪の変形を生じることがあります(写真3)。
乾癬は「かんせん」と読みますが、人にうつることはありません。
主な症状が皮膚にある乾癬は、尋常性乾癬(通常の乾癬という意味です)と呼ばれ、日本人での有病率は、0.4%程度と推定されています。日本人では、男性に多い傾向にあり、発症年齢は30歳代から60歳代で多くなっています。
一部の患者さんに、関節リウマチのような関節症状を伴うことがあり、その場合は乾癬性関節炎と呼ばれます。
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写真1. Medicine, Volume 41, Issue 6, 2013, pp. 334-340
写真2, 3. The Lancet, Volume 386, Issue 9997, 2015, pp. 983-994
写真2, 3. The Lancet, Volume 386, Issue 9997, 2015, pp. 983-994
乾癬の原因は?
乾癬の発症の原因は完全には解明されていません。
しかし、多くの研究によりわかってきていることもたくさんあります。
乾癬の発症には環境的要因(喫煙習慣、ストレス、感染症、肥満など)や、遺伝的要因(乾癬になりやすい体質)など要因が関係すると考えられています。
通常、表皮の細胞は、28日ほど(約1か月)で、表皮の底から表面に押し上げられ、死んだ細胞となり剥がれ落ちます。これを肌のターンオーバーと言います。
乾癬を発症すると乾癬の発疹部のターンオーバーが通常の10倍ほどにも亢進し、表皮の細胞が表皮の底からわずか3-5日ほどで肌の表面に押し上げられポロポロと剥がれ落ちる状態が維持し、盛り上がりのある特徴的な発疹となります(図1)。
表皮の細胞(角化細胞)と免疫細胞(リンパ球と樹状細胞と呼ばれる細胞)が様々な物質(サイトカインと呼ばれます)を出し、互いに作用しあうことが乾癬の発疹や病態に大きく関わることがわかっています。これら免疫に関わる細胞が出す物質はサイトカインと呼ばれます。TNFα(ティー・エヌ・エフ・アルファ)、IL-17(アイ・エル・17)、IL-23(アイ・エル・23)というサイトカインが、特に尋常性乾癬の病態に大きく関わることがわかってきています。
しかし、多くの研究によりわかってきていることもたくさんあります。
乾癬の発症には環境的要因(喫煙習慣、ストレス、感染症、肥満など)や、遺伝的要因(乾癬になりやすい体質)など要因が関係すると考えられています。
通常、表皮の細胞は、28日ほど(約1か月)で、表皮の底から表面に押し上げられ、死んだ細胞となり剥がれ落ちます。これを肌のターンオーバーと言います。
乾癬を発症すると乾癬の発疹部のターンオーバーが通常の10倍ほどにも亢進し、表皮の細胞が表皮の底からわずか3-5日ほどで肌の表面に押し上げられポロポロと剥がれ落ちる状態が維持し、盛り上がりのある特徴的な発疹となります(図1)。
表皮の細胞(角化細胞)と免疫細胞(リンパ球と樹状細胞と呼ばれる細胞)が様々な物質(サイトカインと呼ばれます)を出し、互いに作用しあうことが乾癬の発疹や病態に大きく関わることがわかっています。これら免疫に関わる細胞が出す物質はサイトカインと呼ばれます。TNFα(ティー・エヌ・エフ・アルファ)、IL-17(アイ・エル・17)、IL-23(アイ・エル・23)というサイトカインが、特に尋常性乾癬の病態に大きく関わることがわかってきています。

図1. 左のイラストは、健常な表皮で、表皮ターンオーバーは28日ほどであるのに対し、右のイラストは乾癬の発疹部で、表皮ターンオーバーは3-5日ほどになっている。
尋常性乾癬の診断と重症度について
乾癬の発疹が典型的な場合は、経験を積んだ皮膚科医であれば、診察により診断がつく場合も多いです。発疹が必ずしも典型的でない場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合は、局所麻酔で、発疹部を一部切り取り調べる皮膚生検が診断に有効な場合が多いです。
乾癬の重症度は、
①発疹の面積を手のひら何枚分に該当するかを診察するBSA (Body Surface Area)という方法(図2)と、
②発疹の赤みの程度、盛り上がりの程度、ガサガサの程度、および面積により算出するPASI (パシと読みます: Psoriasis Area and Severity Index)という方法(図3)があります。
共に10%以上が重症とされています。
乾癬の重症度は、
①発疹の面積を手のひら何枚分に該当するかを診察するBSA (Body Surface Area)という方法(図2)と、
②発疹の赤みの程度、盛り上がりの程度、ガサガサの程度、および面積により算出するPASI (パシと読みます: Psoriasis Area and Severity Index)という方法(図3)があります。
共に10%以上が重症とされています。

図2. BSAによる評価法のイメージです。手の平12枚分でBSAは12%となります。

図3. PASIによる評価法のイメージです。発疹の赤み、盛り上がり、ザラザラ度合い、面積を複合評価します。
尋常性乾癬の治療
皮膚の発疹を主体とする尋常性乾癬の治療は①外用療法(ぬり薬による治療)、②光線療法(治療用紫外線による治療)、③内服療法(飲み薬による治療)、④注射療法(生物学的製剤による治療)の4つに大きく分けられます。
一般的には外用療法が最も基本的な治療となりますが、効果が不十分で、患者さんがより積極的な治療を希望される場合には、内服療法や光線療法が選択される場合があります。また、内服療法、外用療法を行っても十分な改善が得られず、より積極的な治療を希望される場合には生物学的製剤という注射薬による治療が選択されることがあります。(注: 当院では光線療法は現時点ではご利用いただけません)
当院ではこれらの治療を発疹の重症度、現治療への反応、ライフスタイルなどに応じて選択することに努めています。
一般的には外用療法が最も基本的な治療となりますが、効果が不十分で、患者さんがより積極的な治療を希望される場合には、内服療法や光線療法が選択される場合があります。また、内服療法、外用療法を行っても十分な改善が得られず、より積極的な治療を希望される場合には生物学的製剤という注射薬による治療が選択されることがあります。(注: 当院では光線療法は現時点ではご利用いただけません)
当院ではこれらの治療を発疹の重症度、現治療への反応、ライフスタイルなどに応じて選択することに努めています。

図4. 尋常性乾癬の治療方法の概略
外用療法(ぬり薬による治療)
尋常性乾癬の治療においては、外用療法は最も基本となる治療法です。外用剤には、ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬の2種類があります。ステロイドの外用薬は、強い抗炎症作用により効果を発揮します。また、活性型ビタミンD3製剤は、ターンオーバーの亢進した乾癬発疹部の細胞増殖を抑える作用があります(図1参照)。
従来は、これらの2剤を重ねて外用したり、日をずらして外用したり、また薬局で混合して調剤してもらい外用を行っていました。
近年では、ドボベット®やマーデュオックス®など、両薬剤の配合剤(2つの成分が合わさり1つの薬剤となっている)が主流となり、また、軟膏以外にも、ゲル剤やフォーム剤(泡の薬剤)など様々な剤型が使用可能となっています。
従来は、これらの2剤を重ねて外用したり、日をずらして外用したり、また薬局で混合して調剤してもらい外用を行っていました。
近年では、ドボベット®やマーデュオックス®など、両薬剤の配合剤(2つの成分が合わさり1つの薬剤となっている)が主流となり、また、軟膏以外にも、ゲル剤やフォーム剤(泡の薬剤)など様々な剤型が使用可能となっています。
内服療法(飲み薬による治療)
飲み薬による治療には、乾癬で起こる皮膚の角化異常を調節する作用のあるチガソン®(エトレチナート)、免疫抑制作用をもち乾癬の暴走した炎症をおさえるネオーラル®(シクロスポリン)、免疫調節作用をもち角化細胞やリンパ球の相互作用をおさえるオテズラ®(アプレミラスト)などがあります。
免疫細胞が産生する乾癬の発疹ができやすくなる物質をブロックするソーテクツ®(デュークラバシチニブ)が2022年9月に新しく承認されています。
ソーティクツ®の導入には胸部X線撮影や胸部CT撮影、ウイルス性肝炎の有無調べる血液検査などが必要となります。当院での処方は可能ですが、胸部X線撮影や胸部CT検査は別途、当院と提携している他院で行っていただく必要があります。
免疫細胞が産生する乾癬の発疹ができやすくなる物質をブロックするソーテクツ®(デュークラバシチニブ)が2022年9月に新しく承認されています。
ソーティクツ®の導入には胸部X線撮影や胸部CT撮影、ウイルス性肝炎の有無調べる血液検査などが必要となります。当院での処方は可能ですが、胸部X線撮影や胸部CT検査は別途、当院と提携している他院で行っていただく必要があります。
注射療法(生物学的製剤による治療)
乾癬治療に用いられる注射薬は、生物学的製剤とよばれ、現在11製剤が使用されています。いずれもバイオテクノロジーにより作られた抗体製剤です。尋常性乾癬では、ぬり薬や飲み薬によるこれまでの治療で十分な効果が得られない場合に、導入が検討されます。
表皮の細胞(角化細胞)と免疫細胞(リンパ球と樹状細胞と呼ばれる細胞)が出すさまざまな物質(サイトカイン)が尋常性乾癬の発疹の悪化に関わっていました。尋常性乾癬にかかわるこれらのサイトカインのうち、TNFα(ティー・エヌ・エフ・アルファ)、IL-17(アイ・エル・17)、IL23(アイ・エル23)が特に尋常性乾癬の病態に大きく関わることがわかってきています(図1)。各生物学的製剤はこれらのいずれかのサイトカインをピンポイントで抑えることで効果を発揮します(表1参照)。
2010年に乾癬治療に生物学的製剤が使われるようになって以来、乾癬の治療は大きく変わり、多くの重症乾癬の患者さんが、皮疹がほぼなくなる状態を目指せるようになりました。
生物学的製剤の導入は、日本皮膚科学会が認めた生物学的製剤承認施設でのみ可能となっています。また、定期的な検査と、副作用に対応できる生物学的製剤承認の総合病院や呼吸器内科専門医による対応のとれる病院との連携が必要と定められています。当院は生物学的製剤承認施設であり、これらを遵守し、診療にあたっています。
生物学的製剤の導入および維持投与においては、定期的な胸部X線撮影や胸部CT撮影、ウイルス性肝炎の有無調べる血液検査などが必要となります。胸部X線撮影や胸部CT検査は別途、当院と提携している他院で行っていただく必要があります。
生物学的製剤を用いた治療では、医療費が自己負担限度額を超える場合があります。医療費補助制度につき、正しい知識を持つことにより、医療費の負担を軽減し得る場合があります。詳しくは、医療費補助制度についての項目をご参照ください。
当院は、治療および医療費の補助制度につき正しい情報提供をし、安全な医療を行っていくことに努めています。
表皮の細胞(角化細胞)と免疫細胞(リンパ球と樹状細胞と呼ばれる細胞)が出すさまざまな物質(サイトカイン)が尋常性乾癬の発疹の悪化に関わっていました。尋常性乾癬にかかわるこれらのサイトカインのうち、TNFα(ティー・エヌ・エフ・アルファ)、IL-17(アイ・エル・17)、IL23(アイ・エル23)が特に尋常性乾癬の病態に大きく関わることがわかってきています(図1)。各生物学的製剤はこれらのいずれかのサイトカインをピンポイントで抑えることで効果を発揮します(表1参照)。
2010年に乾癬治療に生物学的製剤が使われるようになって以来、乾癬の治療は大きく変わり、多くの重症乾癬の患者さんが、皮疹がほぼなくなる状態を目指せるようになりました。
生物学的製剤の導入は、日本皮膚科学会が認めた生物学的製剤承認施設でのみ可能となっています。また、定期的な検査と、副作用に対応できる生物学的製剤承認の総合病院や呼吸器内科専門医による対応のとれる病院との連携が必要と定められています。当院は生物学的製剤承認施設であり、これらを遵守し、診療にあたっています。
生物学的製剤の導入および維持投与においては、定期的な胸部X線撮影や胸部CT撮影、ウイルス性肝炎の有無調べる血液検査などが必要となります。胸部X線撮影や胸部CT検査は別途、当院と提携している他院で行っていただく必要があります。
生物学的製剤を用いた治療では、医療費が自己負担限度額を超える場合があります。医療費補助制度につき、正しい知識を持つことにより、医療費の負担を軽減し得る場合があります。詳しくは、医療費補助制度についての項目をご参照ください。
当院は、治療および医療費の補助制度につき正しい情報提供をし、安全な医療を行っていくことに努めています。
表1. 乾癬治療で使用される生物学的製剤一覧
乾癬の治療で使用される生物学的製剤の一覧を示します。点滴製剤であるレミケードを除き、すべて注射製剤です。赤字で示しているのが標的分子です。製剤により自己注射が可能な薬剤(家で自分で注射する薬剤)と、自己注射はできず、院内で医療スタッフにより注射を行う薬剤があります。
製品名 (一般名)
|
標的分子 (さらに詳細な標的分子)
|
投与間隔*
|
自己注射
|
トレムフィア (グセルクマブ)
|
IL-23 (IL-23p19)
|
8週間
|
×
|
イルミア (チルドラキズマブ)
|
IL-23 (IL-23p19)
|
12週間
|
×
|
スキリージ (リサンキズマブ)
|
IL-23 (IL-23p19)
|
12週間
|
×
|
ステラーラ (ウステキヌマブ)
|
IL12/23 (IL-12/23p40)
|
12週間
|
×
|
コセンティクス (セクキヌマブ)
|
IL-17 (IL-17A)
|
4週間
|
〇
|
トルツ (イキセキズマブ)
|
IL-17 (IL-17A)
|
2~4週間
|
〇
|
ルミセフ (ブロダルマブ)
|
IL-17 (IL-17RA)
|
2週間
|
〇
|
ビンゼレックス (ビメキズマブ)
|
IL-17 (IL-17A/F)
|
4~8週間
|
×
|
ヒュミラ (アダリムマブ)
|
TNF-α
|
2週間
|
〇
|
シムジア (セルトリズマブ・ペゴル)
|
TNF-α
|
2~4週間
|
〇
|
レミケード (インフリキシマブ)
|
TNF-α
|
8週間
|
×点滴製剤です
|
*各製剤は、導入初期にはローディングといって、薬剤の血中濃度を上げるため、表に記載されている投与間隔より短い間隔で注射スケジュールが規定されているものが多いです。表にある投与間隔は、ローディング後の投与間隔となります。
乾癬とメタボリック症候群について
乾癬では、皮膚の症状のみではなく、肥満体型や、血中コレステロールの高値、高血圧、糖尿病、狭心症や心筋梗塞などを合併しやすいことが統計学的に知られています。特に、糖尿病や心疾患を発症していなくても、太り気味で、コレステロールが高め、血圧が高め、あるいは血糖値が高めの状態は、メタボリック症候群と呼ばれ、糖尿病や、心疾患の発症リスクが高くなると報告されています。
主に脂肪細胞という脂肪を蓄える細胞が、本来は、アディポサイトカインという種々の物質を分泌し、血糖値の上昇を抑えたり、血管のダメージを修復してくれているのですが、肥満状態となると、この機構がうまく働かなくなり、糖尿病や、心疾患の発症リスクを高めてしまうと考えられています。
乾癬が重症であれば、それに伴う全身性の炎症が、さらに、これら合併症の発症や悪化を促すことが報告されています。
そこで、乾癬治療の一環として、定期的な運動や、暴飲暴食をさけることで、健全にダイエットをすることが重要となる場合もあります。
主に脂肪細胞という脂肪を蓄える細胞が、本来は、アディポサイトカインという種々の物質を分泌し、血糖値の上昇を抑えたり、血管のダメージを修復してくれているのですが、肥満状態となると、この機構がうまく働かなくなり、糖尿病や、心疾患の発症リスクを高めてしまうと考えられています。
乾癬が重症であれば、それに伴う全身性の炎症が、さらに、これら合併症の発症や悪化を促すことが報告されています。
そこで、乾癬治療の一環として、定期的な運動や、暴飲暴食をさけることで、健全にダイエットをすることが重要となる場合もあります。

図5. 乾癬と併存疾患発症リスク
Boehncke, W-H. et al. Exp Dermatol, 20: 303, 2011
Boehncke, W-H. et al. Exp Dermatol, 20: 303, 2011