掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは

掌蹠(しょうせき)とは、手のひら、足裏のことを指します。掌蹠膿疱症では、手のひら、足の裏に膿疱と呼ばれる黄色のつぶつぶを繰り返し起こすことを特徴とします(図1)。この膿疱は、小水疱と呼ばれる小さな無色のつぶつぶが次第に黄色くなり、皮がむけるというサイクルを繰り返し、膿疱が出現する部位には紅斑という皮膚の赤みを伴うことが多いです(写真1)。
手や足の爪にも変形を伴うことがあります。
これらの発疹は、痛みやかゆみを生じて、生活の質を低下させたりすることがあります。

また、左右の鎖骨が交わる部位での関節(胸鎖関節)をはじめとする関節の痛みを伴うことがあり、掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ばれます。この関節の痛みも生活の質を低下させる要因となります。
図1. 掌蹠膿疱症のイラストです。手の平、足の裏に赤みと膿疱と呼ばれる発疹を繰り返し生じます。
写真1. Murakami M et al. J Invest Dermatol 2010; 130: 2010-6

掌蹠膿疱症の診断について

掌蹠膿疱症の診断については、手のひら、足の裏に繰り返す水疱や膿疱、紅斑から、見た目での診断が可能である場合はありますが、時に、手の湿疹などとの鑑別が難しい場合もあります。
正確な診断を付けるために、局所麻酔で、水疱や膿疱を切り取って調べる皮膚生検を提案する場合があります。
正確な診断は、その後の治療方針につながる第一歩となるため、とても重要と考えています。

掌蹠膿疱症患者数の統計について

本邦での医療機関からの提出された診療報酬明細書を用いた統計により、掌蹠膿疱症患者さんはおよそ0.1-0.2%、1,000人に1-2人であろうと推測されています1)。欧米の統計では、10,000人に数人と推測され2-3)、日本やアジアの患者割合がより多いと考えられています。
男女比は約1:2で女性に多く、30代から50代の発症が多いと報告されています。また、医療機関受診受診者数は夏の暑い季節が冬よりも多く、夏場に悪化しやすい傾向があります1)。

1)Kubota K et al. BMJ Open 2015: 5: e006450
2) Frysz M,et al: Br J Dermatol. 2024;191:529-538
3) Ramcharran D,et al: Adv Ther. 2023;40:5090-5101

掌蹠膿疱症の原因は?

掌蹠膿疱症の原因はわかっていません。
しかし、掌蹠膿疱症の発症や悪化に関わる因子は多く報告されています。
また、悪化に関わる因子を取り除くことで、症状が改善したり、軽快するという報告も多くあります。
それらは、大きく、喫煙、歯性病巣感染、病巣扁桃などです。

1. 喫煙

一つ目の喫煙についてですが、タバコを吸う方が多く掌蹠膿疱症を発症するわけではありませんが、掌蹠膿疱症の診断がついている人の喫煙率は70%~90%と報告されています4-5)。ちなみに、2024年の日本の習慣喫煙者の割合は14.8%と報告されています6)。さらに、禁煙をすることで、手足の膿疱の数が減ったという報告があります7)。

4) Akiyama T et al. J Dermatol, 22: 930, 1995
5) Erikson MO et al. Br J Dermatol 138: 390, 1998
6) 厚生労働省ホームページ、令和6年国民健康・栄養調査結果より
7) Michaelsson G et al. J Am Acad Dermatol, 54: 737, 2006

2. 歯性病巣感染

歯性病巣感染とは、歯にかかわる感染症で、歯周病(歯肉と歯の間に空隙ができて、歯がぐらぐらになる)や、根尖性歯周炎(歯の根っこの先の感染症)などを指します。掌蹠膿疱症の診断がついている人の歯性病巣感染合併率は80%以上という報告があります8)。また、これらの病巣への歯科治療は60%から80%で有効であったという報告があります9)。

8) Kouno M et al: J Dermatol 44: 695-698, 2017
9)山本洋子ほか:日皮会誌 111: 821-826, 2001
図2. 歯周病とは細菌感染により歯を支える歯茎やその歯の接するあごの骨が徐々に破壊されていく歯の病気です。
図3. 根尖性歯周炎とは、歯の根っこの歯根部というところに炎症病変を生じた状態です。

3. 扁桃病巣感染症

いわゆる扁桃腺が原因病巣(図4) となり、離れた手足に掌蹠膿疱症を引き起こしたり、掌蹠膿疱症の症状を悪化させたりすることがあります。扁桃腺が繰り返し腫れてしまい、掌蹠膿疱症の悪化を起こすこともありますが、まったく扁桃腺が腫れなくても、掌蹠膿疱症に関わることがわかってきています。手術で扁桃腺を取ってしまう(扁桃摘出術)ことで、掌蹠膿疱症が軽快するという報告が集まってきています10-11)。

10) Kouno M,et al:J Dermatol 44:695-698,2017
11)橋本喜夫,他:臨皮:60,633-637,2006
図4. 口腔内のイラストの赤い部分が扁桃腺です。

掌蹠膿疱症の治療

掌蹠膿疱症の治療は
①他の診療施設と連携しての悪化因子の検索・除去、
②皮膚科での外用薬や内服薬、注射薬による治療となります。
当院では悪化因子の検索と、薬物による治療を平行して進めていくように努めています(図5)。
図5. 掌蹠膿疱症の治療の流れの概略

掌蹠膿疱症の悪化因子の検索

掌蹠膿疱症の悪化因子の検索、治療は症状を改善、軽快に導くことも多く、治療の一環として、とても重要な位置をしめます。ただし、喫煙や、歯の症状、扁桃など、皮膚科だけでは解決できない部分が多く、他の医療施設と協力して進めていくことが不可欠となります。当院では、近隣の連携施設と協力して、悪化因子の検索を行っています。

禁煙指導

掌蹠膿疱症の患者さんの喫煙率は高く、禁煙をすることで、症状の改善を期待することができます。喫煙されている患者さんには禁煙の重要性をお伝えし、自力での禁煙が困難な場合は、近隣の禁煙外来を行っている内科クリニックへのご紹介を提案しています。

歯性病巣感染の検索

歯周病や、歯の根っこの感染症などの治療を行うことで、掌蹠膿疱症の改善や軽快が得られることがあります。当院では、これら掌蹠膿疱症に関わりのある歯の病変の検索、治療を行ってくれる近隣の歯科クリニックと連携し、協力して掌蹠膿疱症の治療を行っています。

耳鼻科病変の検索

副鼻腔炎(鼻の周りの骨の空洞の炎症)などの耳鼻科疾患が原因・悪化因子となる場合があります。また、歯科病変からの炎症が波及して、副鼻腔炎を引き起こすこともあります。これらの検索のためには、CTなどの画像診断が有効なことがあり、連携している画像診断専門施設でのCT撮影をお勧めする場合があります。また、その治療は当院と連携している近隣の耳鼻科クリニックをご紹介しています。
また、掌蹠膿疱症の症状改善、症状軽快に高い有効性のある扁桃摘出術につきましては、十分な説明の上、希望される場合は、当院と連携している地域基幹病院の耳鼻科にご紹介をしています。

薬剤による掌蹠膿疱症の治療

掌蹠膿疱症の薬剤による治療は、外用療法(塗り薬による治療)、内服療法(飲み薬による治療)、注射薬による治療(生物学的製剤による治療)があります。

外用療法(ぬり薬による治療)

掌蹠膿疱症に有効な外用剤には、ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬の2種類があります。当院ではこれらを組み合わせたり、症状によっては単独で処方します。

内服療法(飲み薬による治療)

飲み薬による治療には、皮膚の角化異常を調節する作用のあるチガソン®(エトレチナート)があります。また、免疫調節作用をもち皮膚の細胞や免疫細胞の相互作用をおさえるオテズラ®(アプレミラスト)が2025年より新たに治療薬に加わりました。

注射療法(生物学的製剤による治療)

掌蹠膿疱症で使われる注射薬は、生物学的製剤とよばれ、現在3製剤が使用可能です。いずれもバイオテクノロジーにより作られた抗体製剤です。掌蹠膿疱症では、悪化因子の検索や除去、外用療法などで十分な効果が得られない患者さんに導入が検討されます。

掌蹠膿疱症では、IL-17(アイ・エル・17)、IL23(アイ・エル23)という細胞同士が情報を伝えるためのタンパク質が病態に関わっていると報告されています。生物学的製剤はこれらのいずれかのサイトカインをピンポイントで抑えることで効果を発揮します。

生物学的製剤の使用には、定期的な検査と、副作用に対応できる生物学的製剤承認の総合病院や呼吸器内科専門医による対応のとれる病院との連携が推奨されています。当院は生物学的製剤承認施設であり、これらを遵守し、診療にあたっています。
生物学的製剤の導入および維持投与においては、定期的な胸部X線撮影や胸部CT撮影、ウイルス性肝炎の有無調べる血液検査などが必要となります。胸部X線撮影や胸部CT検査は別途、当院と提携している他院で行っていただく必要があります。

生物学的製剤を用いた治療では、医療費が自己負担限度額を超える場合があります。医療費補助制度につき、正しい知識を持つことにより、医療費の負担を軽減し得る場合があります。詳しくは、医療費補助制度についての項目をご参照ください。

当院は、治療および医療費の補助制度につき正しい情報提供をし、安全な医療を行っていくことに努めています。


表1. 掌蹠膿疱症で使用される生物学的製剤
掌蹠膿疱症の治療で使用される生物学的製剤を示します。赤字で示しているのが標的分子です。製剤により自己注射が可能な薬剤(家で自分で注射する薬剤)と、自己注射はできず、院内で医療スタッフにより注射を行う薬剤があります(表1: 表は右にスクロールできます)
製品名 (一般名)
標的分子 (さらに詳細な標的分子)
投与間隔*
自己注射
トレムフィア (グセルクマブ)
IL-23 (IL-23p19)
8週間
×
スキリージ (リサンキズマブ)
IL-23 (IL-23p19)
12週間
×
ルミセフ (ブロダルマブ)
IL-17 (IL-17RA)
2週間
*各製剤は、導入初期にはローディングといって、薬剤の血中濃度を上げるため、表に記載されている投与間隔より短い間隔で注射スケジュールが規定されているものが多いです。表にある投与間隔は、ローディング後の投与間隔となります。